がんの語り手養成事業のひとつとして1月29日、札幌市北区の新琴似北小学校でがん体験者が体験を語り、子どもたちと交流しました。
キャンサーサポート北海道(キャンサポ)では、2015年からがんの語り手を養成しています。この日の語りは、2017年度から始まった『札幌市がん経験者派遣体制構築事業』(〜19年度)の一環です。教育委員会や学校担当者との綿密な打ち合わせ、スタッフと語りの担当者が力を合わせて原稿やスライド作成を行い、5年生の道徳の時間で「命の大切さ」を学ぶ授業に協力しました。
語りをしたのは、キャンサポの活動をもとに出版した『北海道でがんとともに生きる』(大島寿美子編、寿郎社刊)の執筆者の一人でもある田中奏実さん(29歳)=悪性胸膜中皮腫=です。5年生約70人を前にした講演で、田中さんは自らの生い立ちから、悪性胸膜中皮腫と分かった時の気持ちや静岡県での治療生活、帰道してからの生活ぶりを約20分にわたり語りました。がんサロンに参加したことをきっかけに、「『あれもない、これもない』と嘆くより『あれもある、これもある』と考え方を変えることで新しい世界が開けました」と言う田中さんの話は、子どもたちの心に響いたようで、担当の先生も「あんなに真剣な子どもたちの姿は初めて見ました」と語るほどでした。
参観した別の学校の先生は、「きょうの田中さんの話を、子どもたちは一生忘れないでしょう。私にとっても印象的なお話で、がんについてあらためて考えさせられました」と述べていました。
授業が終わった後、田中さんの回りに子供たちが自然に集まり、しばらく話し込むという光景も見られました。
来年度からは、学習指導要領に基づきがん教育が本格実施されます。キャンサポでは今回の語りの結果を分析し、来年度はさらに語り手の養成事業を充実させるとともに、派遣体制の整備を進めていきます。
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