<精巣がんの体験、中学生に語る>

 キャンサーサポート北海道の会員で語り手登録者の和賀豊さんが、2021年1月27日、札幌市立手稲中学校1年生の「道徳」の授業に参加。32人の生徒を前に36歳でがんになって」と題し、3年前の精巣がん体験を15分にわたって語りました。札幌市がん教育実践研究会の一環。
 和賀さんは、診断から手術までわずか3日、その後の抗がん治療と副作用を乗り越えて3か月後、職場復帰を果たしたものの、なかなか思うように仕事ができず悩んだ経緯などを語りました。その間、妻や子供たち家族に支えられたことや、
同じ精巣がん患者の話を直接聴いたり、ブログで励まされ、語り手となって思いを伝えようと決意したことも語りました。遺伝する確率が高い精巣がんについて、現在中学2年生の長男に、率直に伝え、語り合っていることも明かしました。
 授業の主題は「いのちを考える~身近な人ががんになったら」。生徒たちは、自分や家族ががんになったら、と考えながら聴いていました。担当の福富淳平教諭は、①患者さんの気持ち②情報と付き合う家族の気持ち,の3つの視点から語りを聴くように事前に指示しました。この視点は、国立がん研究センターのがん情報サービスの冊子「社会とがん」を参考にしたそうです。 
 語りを聴いた生徒たちは「一番辛かったことは?」「自分ががんになると思っていたか」「病気と向き合うとき、一番大切なことは何か」「一番参考になった情報は?」など次々に質問していました。
 授業の最後に書いた感想文には次のような文章がありました。「がんは本人だけではなく、家族にとっても辛いとよくわかった。その家族が支えだということもわかった」「あらためて命の大切さを感じた。家族や自分ががんになったら、きょうの話を思い出してみる」「もし、お父さんががんになったら、と考えた。その時はできる限りサポートできたらいいと思った」「命があることはとてもすごいことだと思った。1日1日をもっと大切にしたい」「がんにかかった人たちが安心して暮らせる世の中になってほしい」
 授業後、和賀さんは「あらためて自分の気持ちと向き合うことができ、新たな発見もあった。語りの力を実感した。生徒に感謝している」と話していました
 2022年度から、札幌市内の小中高校では、外部講師が参加する保健体育や道徳のがん教育授業が、本格的に行われる見通しです。