「すごくおさまりがいい」「着けていると温かな気持ちになる」「気軽に洗えて、乾きも早いので、スポーツするときにちょうどいい」「普段使いにぴったり。シリコンのものと使い分けています」
プロの技と体験者の知恵が詰まった
乳がんパッド(意匠登録製品)
インターネットで購入していただくことができます。
乳がん術後に乳房を補正するための乳がんパッド。乳房のふくらみを保つためだけでなく、姿勢やバランスの保持、皮膚の保護のためにも重要だといわれています。
大手下着やかつらメーカーをはじめ、さまざまなところから販売されている乳がんパッドは、素材もシリコンやウレタン、布などさまざま、形もいろいろで、それぞれ長所と短所があります。
市販品に対する悩みには「値段が高い」「形や大きさが合わない」「蒸れる」「かぶれる」「熱い」「ずれる」「重たい」「洗えない」「肩がこる」などがありました。
シリコンパッドは重さや感触はいいものの、蒸れる、熱い/冷たい、肩がこる、洗えない、などの不満が。一方、布やウレタン素材の軽いものは、装着していてずれるのが難点でした。
ちょうどよい重さで、着け心地がよく、肌に優しくて、蒸れることなく、洗えて、手頃な値段の日常的に使える乳がんパッドが欲しい…。乳がんを体験した女性たちの希望をかなえたいと開発したのがこのパッドです。
自身も乳がんを体験した洋裁専門家が、自分用に作り始め、その後さまざまな工夫を重ねて完成させました。
「市販のものもいろいろ試しました。数万円のシリコンのものも買いました。さすがに手で触った感じや安定感はいい。でも肌につけたときの冷たい感触が合わなかった。それに肩がこるし、洗えない。蒸れるのも不満でした。それ以外の商品もいろいろ買って研究したけど今ひとつしっくりこない。一方、入院中に病院で患者に指導していた手作りパッドは正直言って質が…。それなら自分が作ってみようと思ったんです。
重すぎないように、固すぎないように、明るい気持ちでいられるように。できあがったパッドは身体だけでなく、心の痛みも和らげてくれました」(一宮美恵子)
改良を重ねたパッドは、プロの技と乳がん体験者ならではの知恵が詰まっています。形はしずく型にして、脇の下まで保護できるようにしました。中に入れる素材にも秘密が…。適度な重さがあってずれにくく、それでいて長時間装着してもつらくならないよう、素材の異なる2種類のペレットを組み合わせまし た。形を保つために、生地の裁断にもこだわっています。手縫いなので風合いが柔らかく、自然なカーブで身体にフィットします。しかも丈夫。洗濯機で洗えます。柄や生地もいろいろあるので、おしゃれも楽しめます。
「自らの経験と技術を他の人のためにも役立てることができたら…」という一宮さんの想いが形になったしずくパッド。ひとりでも多くの乳がん患者・体験者に届けたいと、キャンサーサポート北海道では、プロの指導を受けながら作る乳がんパッドの講習会を2014年秋から月に一度、がんサポートセンターLa Placeで開催し、大変好評でした(現在は販売のみ実施しています)。

病院などでも手作り指導やボランティアによる製作が行われていますが、つくりや質感が全然違います。一宮さんは40年以上の経験を積んだプロの洋裁師。体験知と専門知の見事な融合。確かな技術と乳がん体験者ならではの知恵が細部にまで届いたパッドです。
講習会は毎回盛況で、定員オーバーになることもしばしば。先生のお人柄で和気あいあいと話をしながらの2時間はあっという間でした。丁寧に指導してくれるので洋裁が苦手でも大丈夫。参加者からは「吸い込まれるようにおさまりました」「自分で作ったので愛着がわきます」「みんなで作るのが楽しいです」「自分も洋裁をするのでパッドを自作していたが、やはりプロのものは違いますね」「縫い物が苦手だったけど、自分にも作れてうれしいです」「スポーツするときちょうどいい。もう3つ目です」など喜びの声をたくさんいただきました。相談しながら作ることができるので、乳房温存の方、市販のものでは大きさが合わないという方にも対応できます。
2015年8月にこのパッドが意匠登録され、インターネットやメールオーダーによる販売も開始しました。
新聞での紹介
がんで乳房摘出の札幌の女性*手作り胸パッド講習*「きれいにできた」
2014/10/31 北海道新聞朝刊
ご褒美【まど】
2015/4/25 北海道新聞夕刊
乳がんパッド 手縫いで優しく
2016/1/19 北海道新聞朝刊